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最高裁判所大法廷 昭和24年(れ)2105号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松永東、同小山胖の上告趣意第一点について。

刑法二〇〇条は、憲法一四条に違反するものでないことは、当裁判所が昭和二五年(あ)第二九二号事件について、同年一〇月一一日言渡した大法廷判決の趣旨に徴して、明らかである。(尤も、刑法二〇〇条が、その法定刑として「死刑又ハ無期懲役」のみを規定していることは、厳に失するの憾みがないではないが、これとても、犯情の如何によっては、刑法の規定に従って刑を減軽することはできるのであって、いかなる限度にまで減刑を認めるべきかというがごとき、所詮は、立法の当否の問題に帰するまで、これがために同条をもって憲法に違反するものと断ずることはできない。)論旨は理由がない。

同第二点について。

原判決は、その挙示の証拠を綜合して、判示犯罪事実の全体を認定したことは、原判文上明らかであって、所論「殺人の故意」についても、原判決は所論のように被告人に対する検事の聴取書及び第一審公判調書中被告人の供述記載のみによって認定したものではなく、その他鑑定人高橋哲二作成の鑑定書の記載、押収にかかる薪割一挺の存在等を綜合してこれを認定したものであることは、また、原判文上みとめ得るところである。従ってこの点に関する論旨は理由がない。

次に、右検事の聴取書における被告人の供述及び第一審公判における被告人の供述が所論のように強制にもとずくものであるとの事実は、本件において、これを認める証跡はなく、又右被告人の第一審公判における供述は、被告人の拘禁(昭和二二年二月七日)後三ケ月余を経過した後のものではあるが、本件記録にあらわれた各般の事情を勘考すれば、右拘禁をもって所論のように不当に長い拘禁とすることはできない。論旨はいずれも理由がない。

よって旧刑訴四四六条に従い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官齋藤悠輔の論旨第一点に対する補足意見(前掲判決参照)及び裁判官真野毅、同穂積重遠を除く他の裁判官の一致した意見である。

裁判官真野毅、同穂積重遠の意見は論旨第一点を採用して原判決を破棄すべきものとするのであるが、理由は本判決に引用された昭和二五年(あ)第二九二号事件判決に附記のとおりである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上登 裁判官 真野毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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